-新曲『カミツレベルベット』が非常に高い評価を得ています。
SKY-HI
前作の『スマイルドロップ』が、ネガティブな所から自分が抜け出す時に作った楽曲で、ネガティブと非常に近い距離だったのでホントに辛いときにポジティブな言葉はきっと届かないだろうと思ってたから、ポジティブな言葉は使わないでポジティブな曲を作る、っていうのをやりたくて作りました。なんか安易に、「日はまた昇る」とか「明日は必ず来る」とか言わないっていうのを決めて作ったのが『スマイルドロップ』だったんですけど、『スマイルドロップ』ができて、その後ツアーにどんどん入っていくにつれて自分の気持ちが前向きになっていくのを日々感じていたんです。みんなのお蔭だと思うんです、一緒にリハやってるバンドのメンバーとかダンサーのみんなとか。で、春っぽい曲を作ろうと思って何曲か作っているときに『カミツレベルベット』は、デモでメロディー作ってる段階から鼻歌の延長みたいに適当な言葉で歌を入れていて…サビの最後の部分だけ「Everything's gonna be alright」だけそのまんま出て来て、いや、デモとはいえ俺「Everything's gonna be alright」とか言っちゃうんだ!と思って、自分にビックリしたんです。でも、それが嫌じゃなかったっていうか、他の言葉に差し替えるっていうのも出来たと思うんですけど…ネガティブな事とか、マイナスな気持ちとかそういうの全部受け入れたうえで、明日とか明後日とかが少しでもより良くなるように生きようとか。自分に関わってる人の明日が少しでもより良くなるように、その為に歌おう!みたいな、すごいきれいな事を普通に思えたってことが誇りになったので「Everything's gonna be alright」と思えた自分に嘘をつかないでそのまま曲にしてこうと思って、その時のきっと心境の一番深いところから出てきたのが『カミツレベルベット』っていうテーマだったりワードだったりしたと思うんです。
-SKY-HIはラップで表現をしています。その中で、メジャーではないクラブイベントへの出演やフリースタイルバトルへの出演も積極的に行なっています。AAAでの活動はメジャーでの展開がメインなわけですが、なぜSKY-HIはアングラなイベントにも出るんですか?
SKY-HI
むしろスタートがそこだったっていうか、ラップが好きになったのとヒップホップが好きになったのどっちが先だと言われると「鶏が先か~」みたいになっちゃうけど…でも少なくとも最初にラップを好きになった時、中学生でRHYMESTERさんを見たときはそれが【ヒップホップ】だと認識していなくて…ラップがかっこいいっていう感覚としてはあったけど、それでラップが好きになっていくと、おのずとヒップホップに触れる時間も増えていって、そのうちやっぱり人間生きてくうえで色々と感じる辛さとかコンプレックスとかそういうのに対して、それをプラスに変える術みたいなのをヒップホップの文化…っていうより精神かな?それに救ってもらった感覚が凄いあったんです。そういう思春期を超えてラップずっとやっていきたいと思った時に、最初に行く場所として…今だったらまた違うのかもしれないですけど…当時はクラブに行く、バトルで勝つ、LIVEのチャンスを貰うしかなかったから…。それしか手段は無いんだけど、それが一番楽しかったからやったというだけです。それだけ。だから今でもそういう活動が続いてると思います。
-ラッパーの中でもフリースタイルバトルなどはやらない場合も多いです。でも、あえてそういった活動をする意味はあるのでしょうか?
SKY-HI
いや、なんもないッス。単純にそうするのが「あいつヤバイね」って思ってもらうのに一番近道だったから。ホントそれだけという気がします。AAAとしてのデビューも18~19歳くらいだったから、それを知ってる人とか順番としてAAAを先に知った人から、なんだろう…「なめた目で見られた時」に、ちゃんとねじ伏せるだけの力がスタートとしてないと、話とか曲とか聴いてもらう前の段階で止まっちゃうから。最初の段階で何だコイツスゲーとか、うめぇとか、そう思わせないといけないっていうのはあったのかもしんない…でも、それだけってよりはやっぱ根本にそれが楽しかったから続けているって感じです。
-影響を受けたラッパーっていますか?
SKY-HI
えー、誰だろう…全てのラッパーに影響は受けてるし、みんな好きですよホントに。RHYMESTERさんはやっぱ一番垣根なしだし、KREVAさんは凄いなあって思うし、NORIKIYOさんの影響もそうだし…NORIKIYOさんは一番そういう意味では好き?影響を受けた?わかんないけど、NORIKIYOさんは非常にラッパーとして一番…リスナーの自分とプレイヤーの自分っていると思うんですけど、リスナーの自分が一番心奪われたのが、18~19歳の時に聞いたNORIKIYOさんだった気がします。
-さっきのフリースタイルの話ではないですけど、NORIKIYOさんをピックアップするというのもどちらかと言うと「コア/アンダーグランド」なイメージがします。
SKY-HI
特に意識はしてないですね。どうなるとメジャーなもので、どうなるとアンダーグラウンドなものだっていうのは特に意識はないかな。でも、もし強いてそういう感覚の見方があるとしたら、それは単純に「ローファイ」か「ハイファイ」かってだけでしかないと思う。本質の違いだけでしかないから。それで言うと、2006、7年以降の日本のヒップホップサウンドは、インディーズでも全然メジャー流通のものと比べて音がいい作品はたくさんあったから…だから全然変わんない感覚でリスナーの自分としては聞けていたし、あんまりそこに区別は無い。NORIKIYOさんはセカンド以降は特に、悪事に関しての話はどんどん減っていったから、より人としての部分にどんどんスポットが当たっているのを考えると、手法が違うだけで意識は違わないと思うかな。
-僕らが若干違和感があるのが、AAAで紅白にも出演するメジャー活動と、SKY-HIとしてのアングラにも精通する活動。この両極端な活動に、何か意味があるのかと思いまして…SKY-HIの活動をする中で、AAAのメジャーでの活動がじゃまになったことはありますか?
SKY-HI
全くと言っていいほどないかも。あると言えばあるだろうけど、大体そういうのはちっちゃなことで。要は、大抵のことが「自分のラップがうまくなったら解決した」っていう感じで…なんか、もっと大きくて広い階段をずっと登りたいと思っていて…。
-どうしてもラップ、ヒップホップの世界には「セルアウト」という売れているものを嫌う文化もあるので、AAAでの活動が何か足枷になるのかなと思ってしまいました。
SKY-HI
そういう風に考える方がダサいと多分思ってたかな。だから意識的に考えないことにしてたのかもしれないです。
-SKY-HIとしての活動がスゴく新しいものに感じるのは、そういった「メジャー」「アングラ」という垣根を完全に越えているからなのかもしれないです。
SKY-HI
いろんな経験してきたのはホントに幸せなことだと思うし、いろんな武器があるとは思うんですけど、そういうのって実はあんま関係ないっていうか…最終的にはLIVEに来てくれた人が「良かったね」って言って帰ることが一番大事。その上で、どんなメッセージをどう伝えるかとかを考えていく、っていう考え方だから。すべてが、「こういうやり方したらヒップホップ的にアリ」だとか「ナシ」だとか、まだ自分のキャリアでは考える段階では無いと思っています。そういう考えって先細っていくだけだし、俺自身も。だからそういう考え方はしたくないし、なにより時間とお金を費やして来てくれるお客さんに失礼だと思うから。「自分がどう見られたいか」が優先されるのは、プレイヤーとしてのプライドが許さない。プライドゆえに、来てくれた人は絶対に楽しんで帰ってもらうっていう…どんな人でも、どんな出自で、どんな人生を送ってきている人でも。だからこそ、しっかりと発言には責任をもってやりたいと思ってるし、ただフワッと、何となく楽しかったねって言うのだけで終わらせるつもりも毛頭ない。しっかりと次の日とか次の次の日、来年のツアーも来てくれるならその時まで残るメッセージがないと、消えちゃうじゃないですか。一瞬のことで終わらせたくないから来てくれた全ての時間をかけて俺の事考えてくれてるすべての時間を正解にしないと、自分のプライドが許さないから。だから、そうするためにすべてやるべきことを考えて、これならきっと満足してもらえるだろうっていうのができたときに、足りてない何かがあるんだったらそこを埋めるためにリハーサルとか練習とか作り込みが生まれるわけです。特に、これがヒップホップの武器で、これがポップスの武器で…とかは考えていないかな。すごいハードにラップするところとかもあるけど、こういうのやったら「ヒップホップ受けもいいだろう」とか考えてやってなくて、ただ単にシリアスな展開に振ったりとか、自分のラップのスキルを使ってエンターテイメントするとか、そういうことをした方が上質だから…そこが一番のベクトルだと思ってます。
-いままでは、ヒップホップ・ラップってスゴく「型」があったと思うんです。それを、SKY-HIからは感じません。
SKY-HI
元々は、ラップって人の曲の間奏使ってしゃべり倒して「俺の曲だ」って言っちゃったりとか、ダンスも頭でクルクル回ったり、人の家の壁紙に落書きしたりとか…そういう所から始まってる文化なのに、「こうじゃないと」ってなったら、学校じゃないんだから…。むしろ学校みたいな頭ごなしなものが嫌いでヒップホップをやっていたはずなのに、皆が学校みたいになってくことの方がホント嫌いで。なんか培われてきたりとか、脈々と伝わってく素晴らしいものとか、このカルチャーとしての成熟度みたいなものは絶対あると思うんだけど、それが必要なら継承する人がずっと継承していくだろうし…SALUくんが出てきたときも、さんざんニュータイプって言われていたけど、でもそのSALUくんがファースト出してから3年経つのを考えると、新しいものが出るのも自然な流れのような気がします。
-SKY-HIの活動で若いユーザーにもヒップホップの魅力が広まっていると思いますか?
SKY-HI
広めていくっていう考え方が実は嫌いで、すごく。だってなんか傲慢じゃないですか?カルチャーに対してもだし、受け取り側としても、そう、学校じゃないっていう…。それで、ずっと停滞している気がします、この国の文化ってやつは。かっこいいものが見たいからかっこいい人のところに行くみたいな感覚じゃなく、「ヒップホップを教わる」みたいな言葉とかがホントに嫌いで、かっこ悪いなと思うし、ヒップホップを広めるもそうだし…「結果的に広まった」は正しいと思うんですけど。
-なるほど。
SKY-HI
自分の中で脈々と一番根っこの部分とかである精神だし、生き方だし。何を作るにしても、ずっと根づいて生き続いているものだと思うんです。それを広めようとするとかって、エゴでしかないから。それはカッコ悪くていやだなと思ってます。そうじゃなくて、単純に俺のこと好きになって、俺のライブ見るようになって、結果的に90、80って年代を遡って何があったのかっていうことを見て聞くことも出来るだろうし、そのキッカケになるような人ではあると思うけどそれが目的になったらすごいかっこ悪いと思うし、俺はむしろヒップホップだと思われなくても全然いい。全世界70億人の人がコイツいいねと思ってもらうところがゴールだから。俺はヒップホップ好きな人を1万人から1万100人にするために音楽をやってるんじゃなくて、俺の音楽を愛してくれる人がその先の人生も幸せになるために音楽をやっている。そういう人が、70億人になる時までやり続けるという事が目標だから。スケール的には、宣教師みたいなのはあんまり…好きじゃないですね。
-SKY-HIのそういった考えに、ヒップホップの持つオリジナルな精神をすごく感じました。
SKY-HI
さっきの話に戻るんですが、型に囚われないってのはいろいろあって、アンコールがなきゃ駄目みたいなのも嫌いだし、だからアンコールはもうしないようにしている。手拍子して「アンコール! 」みたいな、何がどうなってそうなっちゃったんだみたいな、不自然なことがすっごい嫌いなんです。世の中で不自然に感じることって嫌いだから。今の時代楽しい事あったなって思ったら、多分みんなスマホで写真を撮って、それを人に見せるとかSNSにあげるとかで楽しむってのがあると思うんです。だから、ライブでそれを禁止するのって時代的に考えたら不自然じゃないかなぁ、みたいな事とかたくさんある。そういう不自然は嫌だから、より自然な方を選ぶことが結果として、型に囚われないってことにつながっているのかなぁとは思います。
-SKY-HIが新しいヒップホップのラップの形を作っていくことを期待しています!
SKY-HI
ありがとうございます!
SKY-HIが考える新しい時代のヒップホップ
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