タイトルが示すように、このツアーは今年6月に東京・代官山UNITで行われた初のライブ「Premium Live “帰りの会”」の続編だ。
4月にリリースしたセカンド・アルバム『YANKEE』はオリコン・ウィークリーチャートで2位にランクインしたが、以前のワンマン公演はその大きな需要に応え切れるサイズの会場ではなかった。
今回、ツアー・ファイナルの舞台となった東京・LIQUIDROOMにおいても、米津玄師は「一歩一歩上がって行きたい」「でかい所でやって内実が伴っていないと、絶対ハリボテになるし。そのことに意味があるのかなって」と語り、葛藤を抱えながらも誠実な決断によってステージに立っている、という姿勢を伝えていた。
ただしここで大切なのは、彼が機械のような完璧主義と自己満足からそういう決断を下しているのではなく、作品を愛してくれるファンの表情をまっすぐに見据え、ベストの形でファンを楽しませたい、と考えているからだ。以前と同様の顔ぶれによる、信頼の4ピース・バンドが、巧みに同期サウンドも絡めながら躍動感溢れるサウンドで楽曲を支え、米津自身はその中で驚くほど伸び伸びと、そして堂々と一曲一曲を歌い上げてゆく。
米津ワールドがまさしく眼前に広がる『街』を皮切りに、『リビングデッド・ユース』、『MAD HEAD LOVE』といったバンド・サウンド全開の、スピード感の中にも巧みなソング・ライティングで豊かな情感を伝える『YANKEE』収録曲が序盤からオーディエンスを沸騰させていた。
演奏の雄弁さの割にMCはまだまだ言葉少なだが、イントロが鳴り響くたびに凄まじい瞬発力で反応するオーディエンスとバンドの間には、満ち足りたコミュニケーションが成立していることが分かる。
自らじっくりとギターをストロークさせて語り聞かせるように歌われる“眼福”、手描きテイストのアニメーションを背景に披露される名曲『vivi』といった楽曲が中盤戦を彩ると、「生きてて良いことって、あんまないよね(笑)……そうなんだよ! 俺いま、すっごい楽しくて。大阪、福岡、そして東京と3か所を回って来たんだけど、そのたびに、これをやるために音楽やってきたんだなっていうか……良く分かんないけど、ほんっと、ありがとうございます」。
米津玄師はそんなふうに語って、充実感と喜びを溢れ出させていた。ファンタジックな世界でありながら、現実に強く揺さぶりをかける歌の数々にオーディエンスが手を打ち鳴らし、声を上げ続けていたステージの終盤。バンドは勢いに乗ったまま、なんと米津がかつてボカロP・ハチとして発表した楽曲『パンダヒーロー』もセルフ・カヴァーし、大歓声を浴びるのだった。
アンコールに応えると、最初に披露されたのは2015年1月14日にリリースされるニュー・シングルの表題曲『Flowerwall』。音が咲いている、そんな手応えの、人生の中で何度も反芻すべき奥深い歌詞が込められた一曲だ。この曲は、作品を愛してくれる人の顔が見える、そんな体験があってこそ生まれた一曲なのではないか。
今回も『遊園市街』でアンコールの演奏を締め括り、バンド・メンバーを見送ると、米津は「最後にひとつだけ言わせてください。帰りの会は、帰るまでが帰りの会です! バイバイ」と告げて去っていった。
2015年春には、札幌・仙台・東京・名古屋・大阪・広島・福岡と、7都市でのツアーが開催されることも発表されている。人々の笑顔を糧に、米津玄師の表現世界はより大きく、周囲の想像も越えて、広がってゆくのだろう。
PHOTO:中野敬久
米津玄師初ワンマンツアー完走「これをやるために音楽やってきたんだな」
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