数年前、この曲に旧知の音楽仲間である古謝美佐子~うないぐみサイドから「沖縄語の歌詞をつけて唄いたい」と坂本に依頼し、昨年から歌と三線の録音がスタート。坂本の病気による中断を経て今夏ようやく完成した。
オリジナル『undercooled』は9.11アメリカ同時多発テロ事件、その後に続いたイラク戦争や世界中にあふれる軋轢を憂慮し「冷やし足りない」という意味を持つタイトルに「いまの世界はまるで頭に血が上ったかのような状態。もっと冷静になろう。」とのメッセージを込めた。沖縄の基地問題に大きな懸念を持つ坂本龍一とうないぐみが、あくまでも冷静(undercooled)に優しく、かつ強く、音楽と歌の力で平和な沖縄、平和な日本、そして戦争の無い世界の実現を希求し制作したのが本作。
タイトルの「弥勒世果報(みるくゆがふ)」は沖縄古来の信仰で「弥勒神(みるくがみ)がもたらす理想的な平和で豊かな世の中」の意。沖縄語の歌詞の内容は自然賛美~戦争の哀れ~弥勒世果報(みるくゆがふ)への願いを歌っている。
うないぐみ結成は2014年で、坂本龍一のアルバム『NEO GEO』『BEAUTY』、各アルバムリリースに際して行われたワールドツアー、「オペラLIFE」などのプロジェクトに参加した古謝美佐子を中心に、同じく初代ネーネーズの宮里奈美子、比屋根幸乃に島袋恵美子が加わった。長年のキャリアを持つ4人の沖縄民謡唱法は、暖かくも感情過多にならない落ち着いた静かな歌唱。
今回、坂本は、その歌の持つ力を生かすアレンジに徹した。同時に、後半の間奏以降に見せる宇宙的な広がりをもった音像は、まるで地球を俯瞰しているかのようなスケールを感じさせる。
歌の1番のサイズがほんの5小節あまりという音楽史上においても最も短い部類に属する本楽曲は、12番までのシンプルで呪術的なメロディの繰り返しで構成されている。
また、カバー曲にもかかわらず、あたかも最初から沖縄古謡として作られたかのような自然な響きを持っている。間奏ではUAとその子供たちがつぶやきで参加。人間と宇宙の物語を可愛くおしゃべりしてくれた。
本楽曲の売上げからレーベルサイドの手数料や諸経費をのぞいたアーティストの収入は全て*辺野古基金に寄付される。本作のアートワークに使われている絵は、沖縄出身のアーティストCoccoが主旨に賛同し提供した作品である。
*辺野古基金:辺野古新基地建設に反対し、建白書において要求されたオスプレイ配備の撤回、普天間基地の閉鎖・撤去及び県内移設を断念させる運動(活動)の前進を図るために物心両面からの支援を行い、沖縄の未来を拓くことを目的とする。
坂本龍一 新シングルは沖縄民謡グループとのコラボチャリティ
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