「僕達の時間が止まった夜」石月努 with (K)NIGHtribeツアー最終公演

2012年9月にソロー・アーティストとして再始動してから約2年。驚異的なペースで作品を発表し続けている石月努。

10月11日にはソロとして3枚目のアルバム『僕達は時間を止めて恋をする。』をリリースし、自身のバンド (K)NIGHtribe(ナイトライブ)を率いてショート・サーキット・ツアー「僕達は時間を止めて恋をする。」を決行した。今回は11月8日東京代官山UNITで行われたツアーファイナルの模様をレポートすることとしよう。




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?11月8日 代官山UNIT?

定刻の17時30分。アルバム『僕達は時間を止めて恋をする。』のオープニングSEが流れるなか、黒いジャケットに身を包みステージに表れた石月。ドラムスLEVINのクラッシュシンバルを合図に「TONIGHT」の重々しいイントロが始まる。ノリノリのオープニングナンバーを期待して熱い歓声をおくるオーディエンスの気持ちとは裏腹に、ドラムスLEVINのたっぷりとしたリズムに桜村の奏でるエモーショナルなギターが重なる。そしてゆっくりと石月は歌い始める。熱い歓声で迎えたオーディエンスが、石月のその声に聞き入る。ここら辺の“外し演出”がいかにも策士石月らしい。


つづく2曲目の『MY WAY』では幾分テンポを上げて桜村がエッジの効いたギターリフを刻む。一曲目の『TONIGHT』とはまた対照的にこちらはラフなロックナンバー。アルバム『僕達は時間を止めて恋をする。』の曲順通りとはいえ、このオープニングからの2曲目の「MY WAY」までのジェットコースターのような構成が心憎い。


3曲目は力強いポップソング『Parade』。つづく『雨のち君が咲く』はどこか郷愁を誘うメロディアスなチューン。モニタースピーカーに右足をのせて、熱っぽく歌う石月。前半から勢いで押し切るのではなく、多彩案楽曲が並ぶ。曲ごとに場面が変わっていくカラフルなセットリストになっている。


「今日は最終日なんで、悔いのないよう暴れてちょうだい!」。短いMCを挟んでアルバムのタイトル曲でもある『僕達は時間を止めて恋をする。』を披露。“誰かに恋をしたら 誰かを大切に想ったら カラダは時間をこえて【続き】の旅をする”と歌われるこの曲。誰もが一度は感じるであろう、この普遍的なメッセージが、シンプルなメロディーに乗せて力強く響く。オーディエンスはそれぞれの想いを重ねて、この場所に特別な空間を創る。


『DROP』、『FACES』とライヴでの定番曲が続く。『FACES』では力強い桜村のリフがバンドのアンサンブルを牽引する。2012年の再活動時はソロ・アーティストとしてのスタートだったが、ライヴ、音源制作を重ねていくなかで、桜村眞(Guitar)、Sato(Bass)、そしてLEVIN(Drums)という3人の仲間と出会い、2014年4月からは石月の新たなカタチ“石月努 with (K)NIGHtribe”として活動をしている。石月は自分のなかで生まれるすべての音をコントロールする完璧主義者であると同時に、音楽仲間との化学反応から生まれる予想不可能なマジックを信じている男でもある。


この日12曲目に演奏された「LAST DAY」ではそんな石月と(K)NIGHtribeとのマジックが存分に体現されたチューンだ。モータウン風リズムの軽快なポップソングではあるが、ハネ過ぎないロックなLEVINのグルーヴ、桜村の絶妙のコーラスワークが石月努 with (K)NIGHtribeのオリジナリティーを形成する。オープニングの「TONIGHT」から「MY WAY」、そして中盤の「ENEMY」から「輪廻メリーゴーランド」への流れ等、アルバムの構成を意識したセットリストではあるが、ライヴにおいての不確定要素が良い方向に作用し、予定調和にならずにスリリングに聴かせる。


本編後半は、2013年6月にリリースしたファーストアルバム『プテラノサウルス』に収録のバラード『ありがとう』、そしてニューアルバム収録のスローワルツ『虚舟-ウツロブネ-』と石月の言葉をしっかり届けるチューンが続く。そして『ありがとう』、『虚舟-ウツロブネ-』の温かな体温をたもったまま、本編最後は石月が音楽活動を再開するキッカケになった曲、『365の奇跡』でこの日のステージの幕はいったん閉じた。


アンコールは疾走感溢れるパワー・ポップ『メロス』からスタート。右手をまるで鳥の翼のように広げて、軽やかに歌う石月。オーディエンスもそれに応えようと、大きく両手を掲げ、石月から産まれたばかりのその音を向かい入れる。続く『DANCE DANCE DANCE』ではLEVINの大きく横に揺れるグルーヴが会場を揺らす。


ダブルアンコールはライヴでのキラーチューン『Re:BIRTH』からスタート。“東京、もう一発だけやらせてくれ”というMCをキッカケに演奏されたのは2013年10月にシングル『MY WAY』のカップリングとしてリリースされた『I BELIEVE』。高揚した会場を後にするのを惜しむように、いく度となくオーディエンスの歓声に応えて、石月はこの日のステージを後にした。


全25曲、約2時間30分のライヴパフォーマンス。楽曲的にはレンジの広いカラフルなセットリストだったが、石月が終始一貫してオーディエンスに放ち続けたのは、シンプルに“愛の歌”。冗長なMCや過美な演出に頼ることなく、ひたむきに自身の想いを音にのせ、放ち続けた石月。この日、彼が伝えたかったメッセージは、同じ場所、時間を共有したオーディエンスの中に確かなメッセージとして染み渡っていたはずだ。

TEXT/ぽっくん



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