【REPORT】切なさと脱力、そして日常のエロスが交錯する10CM“エロ可愛い”ライブは男子禁制(?!)な秘密の花園



2010年に発表した「アメリカーノ」でブレイクし、一気に韓国インディ・シーンの注目株となった10CM。彼らが、昨年12月に1年3ヶ月ぶりとなる日本盤オリジナル・アルバム『10CMです。』をリリース! それを記念し、3月15日にタワーレコード渋谷店「CUTUP STUDIO」で「10CMリリース記念ライブ~10CMです。」を開催した。

生活感のあるエロスがクスリとした笑いを呼ぶ


10CMとはクォン・ジョンヨル(ボーカル、ジャンベ) とユン・チョルジョン(ギター、コーラス) からなるアコースティック・デュオ。2013年の日本デビュー後、「10CM NIGHT~オヌルパメ」と題したライブを2回開催してきたが、それらは客演を迎えていたため、今回が日本初の単独コンサートと言えよう。しかも、ベース、キーボード、ドラムス&ジャンベを交えたバンド編成での登場だ。

序盤は新作収録曲をちりばめ、ライブはアルバムオープニング曲「3枚目のプレッシャー」からスタート。「3枚目」なのは『10CMです。』が韓国盤3rdアルバム『3.0』をベースにしているから。ここではヒット作を連発してきた彼らならではのプレッシャーを歌い、気負いのなさやほんわかとした脱力感が特徴的な10CMワールドが全開だ。キーボード奏者はメロディオン(ピアニカ) を手にし、サウンドはほっこり。「アメリカーノ」のような曲はまぐれ当たりだから、もう作れない、なんて自虐的詞も楽しく、アコースティックなステージでもオーディエンスをグイグイ引き込む力強さを見せる。

そして「アメリカーノ」と並ぶ初期の名曲「今夜は暗闇が恐いよ」を続けて、10CMの歴史をプレイバック。キーボードは夜の街をぼんやり照らす橙色の灯りにも似た音を奏で、会場の雰囲気も和んでいく。とはいえ、歌の内容は、今夜は何もしないから泊まっていきなよ、的な下心を歌ったもの。ジョンヨルも「サウンドはロマンチックだけど、歌詞はエロい。みんなが好きな感じでしょう?」と沸かす。


「エロい」と評される10CMの世界。彼らは「3枚目のプレッシャー」でも「エロい曲を作らなきゃいけないのかな? いやらしいのなら、いけるかな?」と歌った。K-POP界ではセクシーさを前面に出したパフォーマンスやPVが花盛りで、話題作りのために19禁(日本で言う18禁) を狙う人も多い。対し、彼らは視覚に訴えることなく、日常に潜むエロさを比喩的に歌い、リスナーにクスリとした笑いを誘う。エスプリの利いたエロスを知的に愉しむ……それもまた10CMライブの醍醐味だ。



そして男女混声ボーカルユニットのCOOLが1998年に大ヒットさせた「エサン」のカバーへ。彼らのリメイク・バージョンもチャート一位に上がったが、「僕らの曲じゃないから、嬉しいのに嬉しくない、おかしな気分です」と話し、そんな本音トークも痛快。ドラマーはジャンベを奏で、男女のパートを一人でカバーするジョンヨルの伸びやかな声を客席は体を左右に揺らしながらエンジョイしていた。

続いたのはこれまた詞が秀逸なアルバムの注目曲「アフリカ青春だ」。ベストセラー本「辛いから(アップニカ) 青春だ」のタイトルもじったネーミング・センスだけでなく、アフリカだけでなく世界中旅したいし準備も万端だけど、パスポートもビザも金もない、というズッコケ・ワールドも愉快! 一転、代表曲「チュッケンネ(死ぬほどいい)」では山下達郎ばりのシティポップ・サウンドに、生活感漂うエロさを潜ませ、甘い雰囲気で会場を虜にする。

MCを挟んで行った、ジョンヨル VS チョルジョンのフェイバリットな新曲対決は、リリース・ライブならではの好企画。「僕らはそれぞれ好きな曲が違う。チョルジョンは『片思い』が好きで、僕は『ストーカー』が好き」と話してこの2曲を歌い、「僕らのエロい感性の代表曲」という「きみの花」に続いて、中盤の大注目曲「アナジョヨ」へ。曲名は「抱いて」の意で、客席も「アナジョヨ(抱いて)」と声を合わせたが、演じ手と聴き手が共に「抱いて、抱いて」と歌うライブもなかなかない。超満員の場内は女性客が占め、終盤、ジョンヨルは「今日は男性客がいないから、コンディションがいい」とも。口にしづらい「抱いて」という台詞を場内が一つになって大きな声で掛け合えば、そこは女性のための秘密の花園と化した。


そして同じく中盤にはもう一つの注目曲にして初の日本語詞での曲となる「さよなら(クリウォラ)」を。チョルジョンが「ジョンヨルは歌うのが難しかったみたい」と言えば、相方は「新しい感性で歌えて良かった」と語り、切なさ溢れる歌を哀愁のメロディオンがさらに切なくしていた。


フェティッシュな極エロ・ソングからファンキーなナンバーまで



終盤は本人たち曰く「このライブで一番歌いたかったエロい“ボス曲”」な「キングスター」からスタート。裏打ちのゆったりとしたリズムにのせ、ジョンヨルがこの日マックスに豊かな声量を惜しげもなく披露するが、テーマはストッキングへのフェティッシュな想いで、彼が彼女のストッキングを履いちゃうという歌。変態系の詞をトコトン本気で歌い上げれば、ユーモアと笑いが弾けていた。

そしてアップテンポな曲を畳み掛けるように4連発。ドラムンベース・タッチなイントロからスライドし、ジャズとロックを行き来しながらエロ・コミカルに歌う「Oh! YEAH」、セクシー・ファンクな「オヌル・バメ (今夜に)」、さらに、バラエティ番組から生まれた「死ぬかつきあうか」と彼らの代表曲「アメリカーノ」はロック・テイストで!

その後、リクエスト・タイムとなったが、ここでも彼らは“らしさ”を発揮する。レゲエ・ミュージシャンとのコラボ曲をおねだりされると、躊躇するジョンヨルにチョルジョンから「歌詞知らないんだ?」との突っ込みが。それにジョンヨルが「知ってるさ。でも、僕の曲じゃないから、気持ちが入らない」と答えながらも、アカペラでチョットだけサービス。ボッサな「ネムセ・ナヌン・ヨジャ(においのするおんな)」をリクエストされれば、「最初はセットリストに入れてたけど、今日はちょっと違うかなと思って外した」と舞台裏を明かす。そして「モーニングコール」のリクエストには「僕たちも覚えてるかな?」なんて言いながらサラリと歌い、「カラオケみたい」とやりとりを楽しんだ。


本編最後には最新のヒット曲「スダムスダム(なでなで)」を歌い、歌でファンを“なでなで”した10CM。アンコールでは再度ロッカーとしての顔を露わにし、「タバコ王スモーキング」で会場をロックする。そして「今日の黒い衣装もこの曲のため。OASISみたいでロックスター風でしょ」とジョークを飛ばし、曲の最後には日本語で「タバコ、大好き!」とシャウト。続いた「Nothing without you」はしっとりと切なく歌い、緩急のある構成で楽しませる。さらにダブル・アンコールは「みんなが家に着いたら、平穏な夜が過ごせるように」という配慮から、原点に立ち返ってメンバー二人だけで「Good Night」を歌い、優しい余韻を残した。


ステージとの距離感10センチの迫力



青春の一こまを切り取り、ほのぼの、おとぼけ、ユーモアを交えて活写する10CM。「エロい」という前評判を頼りにライブに向かえば、肩透かしを喰らうかもしれない。なぜなら、彼らのエロスは言葉の裏に隠れ、辿り着いたとしても、聴き手がビックリなフェティッシュ・ワールドってこともあるから。ジョンヨルは「においのある女性が好き」と語り、匂フェチなことも隠さない。彼らのライブには、二人が放つエロスを読み解くという愉しみもある。

加えて、そのパフォーマンスも十二分に魅力的だ。「アコースティック・デュオ」というイメージを覆す躍動感タップリのステージは、ヘリョンというロックバンドを経て結成した彼らの真骨頂。何よりジョンヨルの歌声が素晴らしい。通訳を介すことなく、彼らの言葉をモニター上で日本語に変換していく進行は二人の言葉の温度をダイレクトに伝え、彼らのアドリブ、観客とのホットな応酬に、ステージとの距離はわずか10センチに感じられた。

「人間的で正直な言葉が好き」「僕らは純粋で甘い曲は似合わない」と語るジョンヨルのトークには表裏がない。トレードマークのエロさも青年男子の素直な感情の発露。正直さは時に毒舌となって表われるが、ファンから見れば、可愛らしくも映る。

日本語曲を歌う際、「日本語の発音は可愛いと思って聞いてください」という彼らに客席から「可愛い」との声が飛ぶと、ジョンヨルは「“可愛い”より“エロい”と言って」と切り返した。そして再び客席が「エロ可愛い!」と応じれば、2人も満足気な様子だった。

「韓国ではストリートやライブハウスからファンが増えていったけど、日本でもファンが増えていることに面白さと、ときめきを感じています」

そう語る彼らはこのエロ可愛いらしさを武器によりビッグな舞台、武道館を目指す。


ライター:きむ・たく


「10CMリリース記念ライブ~10CMです。」

3月15日(日) 開演18:00 タワーレコード渋谷店 B1 「CUTUP STUDIO」

<セットリスト>

M1 3枚目のプレッシャー

M2 今夜は暗闇が怖いよ

M3 エサン

M4 アフリカ青春だ

M5 チュッケンネ (死ぬほどいい)

M6 片想い

M7 ストーカー

M8 ノエ・コォツ (きみのはな)

M9 アナジョヨ

M10 サランウン・ウンハス・タバンエソ (恋は「銀河水茶房(ウンハスダバン)」で)

M11 さよなら (クリウォラ)

M12 グゲ・アニゴ (そうじゃなくて)

M13 キングスター

M14 Oh! YEAH

M15 オヌル・バメ (今夜に)

M16 死ぬかつきあうか

M17 アメリカーノ

M18 ネムセ・ナヌン・ヨジャ (においのするおんな)

M19 モーニングコール

M19 スダムスダム (なでなで)

-Encore-

M20 タバコ王スモーキング

M21 Nothing Without You

M22 Good Night


【リリース情報】

●シングル「さよなら(クリウォラ)」

発売日:3月21日(土)

取扱い:タワーレコードおよびTOWERmini 全店、タワーレコードオンライン

発売元:KJ-MUSIC 販売元:タワーレコード渋谷店

<収録曲> 1. さよなら(クリウォラ) 日本語歌唱 2. クリウォラ(懐かしいわ) 韓国語歌唱


●最新アルバム「10CM です。」

タワーレコード渋谷店他、オンラインショップ、TOWERRECORDS ON LINEで絶賛発売中


10CM公式サイト:http://ift.tt/1HyLkuM





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